「それでも、やる理由。」
介護職による「登録喀痰吸引等事業者」、
この制度を知っている方は、あまり多くありません。
簡単に言えば、医療的ケアが必要な方に対して、
ヘルパーが一定の医療行為を行えるようにする仕組みです。
ただ、実際にやろうとすると、想像以上に大変です。
まず、書類が多い。
事業所の体制図、手順書、研修計画、指導体制、緊急時対応、連携先など…
「安全を担保するため」に必要なものばかりですが、
一つ一つを形にしていくのは簡単ではありません。
書類を作る時間は、
営業時間の外に生まれることもしばしばあります。
次に、実地研修。
手技の確認だけではありません。
「やってよい場面」と「やってはいけない場面」の判断を
一人ひとりに合わせて伝えていく必要があります。
もちろん看護師ではありませんので、そもそも初めての方が大半です。
正解を覚えるのではなく、
状況を理解できるようになるまで繰り返します。
教える側も、教わる側も、緊張の続く時間です。
そして、始まってからの毎日。
記録の確認、報告の共有、変化の把握、家族との連絡。
一つでも見落とせば、安心は成り立ちません。
「今日は大丈夫だった」ではなく、
「大丈夫であり続けているか」を確認し続ける仕事です。
手間は、確実に増えます。それでも、なぜやるのか。
これまで、外出や生活をあきらめてきた方に多く出会ってきました。
危ないから。
対応できる人がいないから。
お願いできる場所がないから。
理由はいつも同じでした。
できないのは本人の状態ではなく、
支える側の体制でした。
医療的ケアが必要になると、
生活の選択肢は急に狭くなります。
「行ける場所」より
「行っても大丈夫な場所」を探す生活になります。
昨年行ってきた富士山の例などまさにそれです。
※ブログ「日和の富士山へ」より 2025.11.14記事
私たちは、その行ける範囲を少しでも広げたいと思っています。
喀痰吸引は、特別なサービスではありません。
本来は、生活を取り戻すための手段のひとつです。
散歩に行くこと。
買い物に行くこと。
人に会うこと。
それらを“特別な日”にしないための準備です。
事務作業も、研修も、記録も、
すべては安心して日常を過ごすための土台です。
手間が増えるほど、
その人の行ける場所が増えていきます。
だから、やり続けたいと思っています。
安全に暮らせる範囲を少し広げるために。
