吸引の向こう側にある日常
「喀痰吸引」と聞くと、どんなことを思い浮かべるでしょうか。
医療行為。
難しそう。
特別な資格が必要。
そんなイメージを持たれる方も多いと思います。
もちろん、そのどれも間違いではありません。
ですが、私たちが本当に見ているのは、「吸引」そのものではありません。
その向こう側にある、一人ひとりの日常です。
新しく医療的ケアが必要な利用者様との支援が始まるとき、私たちの仕事は、利用者様と初めてお会いする前から始まっています。
ご本人やご家族との打ち合わせ。
相談支援専門員や訪問看護との情報共有。
主治医からの指示書の確認。
喀痰吸引等計画書の作成。
必要な申請や書類の準備。
使用する医療機器や物品の確認。
そして、実際に支援へ入るヘルパーへの研修や手順の確認。
一つひとつは小さな準備かもしれません。
でも、その一つでも欠けてしまうと、安全な支援はできません。
支援が始まってからも終わりではありません。
利用者様の体調は毎日同じではありません。
昨日は元気でも、今日は少し痰が多い。
表情や呼吸の変化に気づいたら、看護師やご家族と相談しながら支援内容を見直すこともあります。
新人ヘルパーが初めて医療的ケアに入る日は、本人以上に先輩ヘルパーや管理者が緊張していることもあります。
「困ったらすぐ電話してね。」
そんな言葉を何度もかけながら、少しずつ経験を積み重ねていきます。
一人のヘルパーではなく、事業所全体で支える。
それが医療的ケアの現場です。
でも、利用者様には、その準備を意識することなく過ごしていただきたいと思っています。
朝、いつもどおり起きて。
好きな服に着替えて。
家族と話をして。
買い物へ出かけたり、映画を観たり、旅行へいくことも。
そんな「いつもの日常」を安心して送っていただくことが、私たちの一番の願いです。
喀痰吸引は、ゴールではありません。
その人らしい生活を続けるための、一つの手段です。
私たちが毎日向き合っているのは、医療行為ではなく、その先にある暮らしです。
だから今日も、一つひとつの準備を大切にしながら、利用者様の「いつもの一日」を支えていきたいと思います。
それが、私たちクラウドナインが考える「医療的ケア」であり、「訪問介護」なのです。
